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技術情報・取扱説明書

 

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技術情報 バイブレーター使用によるコンクリートの振動締固めについて

 型枠内に投入されたコンクリートに適度な振動を与えることにより、コンクリートが型枠、鉄筋の隅々まで充填され、且つ、運搬、投入時に含まれた空気(エントラップドエア)を追い出し、強度、水密性、耐久性に優れたコンクリートを作ることができます。


1、バイブレーターの使用目的

A、コンクリート

 

・①、エントラップドエアを追い出すことにより、強度、水密性、耐久性に優れたコンクリートにする。

・②、鉄筋、型枠の隅々まで、密にコンクリートを充填させることにが出来、ジャンカ、空洞、コールドジョイントの無いコンクリートにする。

・③、コンクリート表面が滑らかで気泡が少なく、きれいな仕上げ面にする。


B、打設作業

・①、突き棒と比較し時間当たりの締め固め能力が大きい。

・②、作業者の疲労が少ないため、均質な締め固めができる。


C、経済性

・①、打設時間が短縮でき、工期を短くすることができる。

・②、硬練りコンクリートに対しては、同一強度の場合、セメント量を少なくすることができる。


2、バイブレーターによる締め固め

A、コンクリートに対する作用

投入されたコンクリートの粗骨材はモルタルに包まれて、粗骨材同士でアーチを形成している。アーチの下には運搬、投入時に生じた空隙が有る。

 

振動を与えると各骨材粒子の摩擦力は静摩擦から動摩擦になることにより、粘着性が少なくなり、粗骨材は平衡を失い、アーチが崩れ、空隙が気泡となる。粗骨材をとりまくモルタルは連続し、コンクリート表面は沈下する

 

さらに振動によって細骨材は粗骨材粒子の空隙を埋め、大きな気泡を追い出す。表面は水分の上昇とともにつやを帯びてくる。

 

バイブレーターに近い部分の気泡は振動により粘性の減少したセメントペーストの間を抜け、表面に達し、骨材は振動に対して安定な位置に移動します。そして、空隙の少ない密なコンクリートになります。(細骨材、セメントペーストがバイブレーターに引き寄せられ、粗骨材は従ってバイブレーターから遠ざかる。)

 

バイブレーターの周囲に密な部分が出来上がるとこの締め固まった部分の振動の減衰は少なくなり、振動はさらに遠くに伝わっていく。締め固まった部分は時間とともに厚くなるが、締め固まった部分が振動を吸収して、最後は振動効果の限界範囲が生じてしまう。

 

B、コンクリートの受ける加速度と有効範囲

コンクリートの中にバイブレーターを挿入すると、コンクリートの各粒子は加速 度を受け振動します。振動はバイブレーターより離れる範囲にしたがい急速に小 さくなります。また、コンクリートのスランプによっても振動の限界範囲は大き く異なります。


C、残存空気量と圧縮強度

バイブレーター等でコンクリートを締め固めることにより、コンクリート中に含 まれている空気は追い出され圧縮強度が高くなります。


D、振動締め固め終了の時期

締め固めが完了するまでの時間は条件によって異なるが10-30秒くらいです。この時間はスランプが低くなるほど時間は長くなります。振動締め固め完了の目安として、コンクリートのせき板との接触面にセメントペーストの線が現れること、もしくはコンクリート表面にモルタルが平均的に浮上して、その表面が光沢を帯び艶が出てきて、コンクリート全体が均一に溶け合ったように見えることでほぼ締め固めの終了となります。


3、コンクリート打設上の注意

良いコンクリートを打設するためにはバイブレーターの締め固めも重要ですがその他に練り、運搬、投入も大きな要素となっています。

A、運搬

①、運搬中の振動により、骨材が沈下し、不均質なコンクリートにならないようにする。
②、運搬容器は仕様に先立ち内部に付着したコンクリート、異物等を取り除く。
③、ポンプ車等で圧送する場合、閉塞等で品質の変化したコンクリートは破棄する。
④、ポンプ圧送の効率を上げるため、細骨材率を上げるとコンクリートは分離しやすくなるので注意する。


B、打ち込み

①、バケットからコンクリートを排出する場合、コンクリートが分離せず容易に排出できるようにすること。
②、コンクリートをバケット等により投入する時、なるべく低い位置から投入すること。(高所より落下させると、骨材が分離すると共に、取り込まれる空気量(エントラップドエア)も多くなります。一度分離したコンクリートは修復できませんし、ジャンカ及びあわおこしのような表面になります。取り込まれた空気を排出するにはバイブレーターを長時間かける必要があり、時間が長くなることによりモルタルが分離しやすくなります)


C、締め固め

①、傾斜部でコンクリートを打設する場合、斜面下方より打ち始める。

◎投入されたコンクリートの重みとバイブレーターの振動でよく締め固めができる。   ×投入されたコンクリートの自重で崩れやすくなり上面にはクラックが入りやすい。バイブレーターの振動でモルタルが粗骨材より早く移動するためコンクリートが不均質になる。

②、バイブレーターの挿入は垂直に規則正しい感覚で行う。

◎バイブレーターによる振動有効範囲に全てのコンクリートが入るような間隔で行う。
 
×振動の行き渡らない部分は締め固め不足となり、逆に振動がかかり過ぎとなる部分ができる。

③、まだ固まらない下層のコンクリートの上に投設する場合は、バイブレーターの先端を仮想のコンクリートに10cmほど差し込んで締め固めを行う。

垂直方向の振動有効範囲は図のようにバイブレーターの先端より上方に最大加速度の位置が有るため、バイブレーターの先端を下層上面につけただけでは打継面に有効な振動力は伝わらずコールドジョイントが発生しやすくなる。


④、バイブレーターを用いてコンクリートの横流しを行わない。

◎骨材の分離が少なく均質なコンクリートとなり締固めも良い。
 
×バイブレーターでコンクリートを移動させるとモルタル分だけが遠くに流れて、粗骨材の分離を起こす。

⑤、硬練りのコンクリート(スランプ10cm以下)よりバイブレーターを引き抜く時はゆっくり引き抜くこと。

バイブレーターは早く引き抜くと後に穴が残り空洞となってしまう。引く抜くスピードはバイブレーターの振動で穴が自然に崩れる程の速さである。


⑥、せき板の継ぎ目からモルタルが漏れないように型枠を作成すること。

継ぎ目よりモルタルが漏れると、空げきを通してブリージング水が流出し、その時ペーストも流出させるため、骨材が露出し、強度の無いコンクリートとなってしまう。外観上も劣る。


⑦、バイブレーターを鉄筋に当てないこと。

バイブレーターを鉄筋に当てると、鉄筋が振動し、バイブレーターと同じような作用をするため、鉄筋の回りにはモルタルが多くなり、付着力が低下してしまう。また、鉄筋の延長にあるコンクリートが固化し始めている場合、空間が出来、コンクリートの鉄筋への付着力が低下してしまう。


⑧、現場にあったバイブレーターの機種及びサイズを選定する。

コンクリート打設をスムーズに進めるため、コンクリートスランプ、投入スピード、及び型枠の形状ばかりでなく、現場の状況、足元など、作業者の安全性、作業性についても考慮し、バイブレーターを選定する必要があります。


⑨、振動力の大きいバイブレーターを広い間隔で使用するよりも、適度な振動力のバイブレーターで小間目に使用した方がよい。

◎コンクリート全体が均質になり強度も一様になる。
 
×バイブレーター周辺、振動のかけ過ぎとなり分離しやすくなる。型枠の近くでは脱型後、外観上一様にならない。

⑩、型枠バイブレーターをかけ過ぎると表面の強度が低下してしまう。

型枠バイブレーターはせき板を通してコンクリートを振動させるため、せき板は棒状バイブレーターの振動筒表面と同じ作用をします。したがってコンクリートのモルタルはせき板近くに引き寄せられ、モルタルを通して上方に逃げる気泡もせき板近くによってきます。従って表面の強度はかけ過ぎにより強度不足となってしまいます。

注:やわらかいコンクリートの場合、モルタル分が多いため、気泡は比較的短時間に上方へと移動し、コンクリート表面に出てしまいますが、硬練りの場合はモルタル分が少なく、気泡が抜けにくいため、完全に気泡を抜くため振動をかけると表面の強度が低下してしまいます。


⑪、型枠の上部が閉じられていたり、斜面となっている場合はバイブレーターだけでは気泡を抜くことは困難です。

コンクリート内の気泡は骨材との比重の差により上方へと移動し、バイブレーターはその動きを促進させる機械です。従ってバイブレーターの振動だけで気泡を横方向に移動させることは困難です。

従って、表面に気泡の少ないコンクリートを打設するためには上方に移動してきた気泡の多くを大気に開放させ、上部のせき板に付着する気泡の数を少なくさせる必要があります。


一層の厚さを薄くし、バイブレーターで十分締め固めることにより気泡の出は少なくなるが完全に無くすことはできない。斜線部のコンクリートに含まれた気泡はせき板表面に付着する。
一層の厚さを厚くしてバイブレーターを十分かけた場合、斜線部のコンクリートに含まれる気泡がせき板表面に付着し、その量も多くなる。

従って補助としてバイブレーターにメッシュ盤を付けた法面バイブレーター又はサーベル等を利用すると気泡を機械的に取り除くことができます。


⑫、コンクリート打ち込み中に粗骨材が分離してしまった場合、粗骨材の多い部分のコンクリートをすくい取り、細骨材の多い部分に移動し、バイブレーターを十分にかける。


4、バイブレーター等の種類



5、内部振動機の構造比較と性能

 

●モーター内蔵型(インヘッダー)

振動力:○ 振子とモーターが直結の為、回転低下が少ない。
作業性:◎ 作業エリアが広い/軽量である/手元の振動が少ない/こまめに作業ができる
安全性:◎ 48V
故障率:○ フレキシブルホースシャフトがない
主な用途: ほとんど全ての現場/建築、土木、よう壁、ブロック、基礎

 

●錐振型

振動力:◎ 先端部にベアリングが無いため振動の伝達効率が良い
作業性:× ホースの振動が大きい/作業エリアが狭い/原動機の重量が重い/こまめな作業がしにくい
安全性:× 200V(100V)
故障率:△ (3000rpm)フレキシブルシャフトが切れ易い。
主な用途: 主として土木、ブロック基礎

 

●軽便型、分断型

振動力:○ 原動機の回転変動が大きい為、負荷が大きいと弱くなること有り。
作業性:× ホースの振動がより大きい/作業エリアが狭い/原動機の重量が重い/こまめな作業がしにくい。(分断型)
安全性:△ 100V(200V)
故障率:× (9000rpm)フレキシブルシャフトが切れ易い。ブラシが摩耗する。
主な用途: ブロック積、裏込め、建築、2次製品